岡山カルチャーゾーンの魅力再発見!
OKAYAMA
CULTURE
SCOPE
OKAYAMA
CULTURE
SCOPE
プロフェッショナル。
そんな言葉がぴったりだと思った。
岡山後楽園の対岸にある出石町は
岡山空襲を逃れた明治・大正時代のレトロな街並みが残り
路地の中にある隠れ家のように
そっと街に溶け込む「地下室リラクゼーション庵un」。
ほんのり薄暗くリラックスできる地下空間では
口コミで評判を呼び、連日、疲れを癒すために訪れた人々に対して
その身体と真摯に、丁寧に向き合いながら
心地よいタイ式マッサージで手当てしてくれる“のんちゃん”こと佐々木彩乃さん。
ここ数年は、岡山とタイやインドを行き来しつつ
ゆるやかさとストイックさを絶妙のバランスで保ちながら
自分らしくいられるペースを見つけた彼女の
その暮らし方・働き方、地域への思いを伺いました。
_________________________________________________________
佐々木
元々ここは、おじいちゃんとおばあちゃんのおうちで、
こどもの頃は週末には必ずここに来てて。
それで、10年前に移ってきて、住み始めたんだけど。
それと同時に庵も開業した感じで。
__
以前から、ずっと同じ職種の仕事をしてたの?
佐々木
ううん。
前は、アパレル。
アパレルで2年くらい働いて、
リラクゼーションサロンで4年働いて、
それで独立したの。
__
天職な感じする?
佐々木
天職だと良いんですけど。
__
アパレルからサロンに転職する時って、何かきっかけがあったの?
佐々木
多分、癒されたかったんじゃないかな、自分がね(笑)。
それまで、マッサージは受けたことがなかったんだけど、
たまたま、本か何かで、リラクゼーション業界みたいなのを見つけて、
行ってみたら、わぁ、ってなって。
あ、勉強してみよう、って思って。
__
そういうきっかけだったんだね。
佐々木
アパレル時代に働きすぎて、
身体を壊したっていうのもあるから、
その時代にこういうのを知ってたら、
自分でケアしたり通ったりできたのかな、
同じような人多いだろうな、と思って。
今女性も、よく働くから。
だから、これ自分に必要だから、
周りの人にも必要だな、と思って。
それで、やってみようかなって。
__
サロンでは、独立を目指して働いている人とかが多いのかな?
佐々木
その当時は、転職組が多かったから、
何か手に職をつけたい、みたいな人が多く働いていて。
でも、私が独立したのは、たまたまかな(笑)。
__
あ、そうなんだ(笑)。
佐々木
うん。
たまたまというか、
ここがあったから、っていうのもあるし。
古いおうちとかが好きだから、
ずっと探してたけど、なかったし。
その当時住んでいた丸の内のマンションで開業する、
っていうのも考えたけど、
なんかしっくりこなかったし。
__
あのマンション、何か店舗が入ってなかったっけ?
佐々木
上の階に、完全予約制の飲食店が入っていたのと、
うちの部屋の前には、タイヨガのサロンがあって、
タイのことはそこで知ったの(笑)。
__
あ、そうだったんだね(笑)。
佐々木
その当時、アパレルやサロンがすごく忙しかったから。
せかせか働いていて、
もうちょっと自分らしく時間を使ったりとか、
きちんとお客さんに向き合いたい、
っていうのもあって。
そしたら、そのお向かいさんが、
ゆる~いタイのヨガをやっていて、
そこのお姉さんが、「いいわよぉ」って(笑)。
すごくゆるっと暮らしてたので、
「あ、タイに行ったらこうなれるのかな」と思って(笑)。
__
サロンとかだと、時間がきちきちっと、って感じ?
佐々木
そう。きちきち。
忙しくて、トイレにも行けないくらい施術が詰まって、
ご飯とかも、ちゃんと食べられなかったから。
__
じゃあ、逆に体調壊したりとか?
佐々木
壊して、辞めた(笑)。
だから、しばらくは出来ないかなぁ、と思ってたけど、
辞めたらすぐ治ったから、すぐ工事して。
__
働いていた時に、最初から独立を意識していたわけじゃないけど、
やってる中で、自然な流れでなんだ。
佐々木
自然な流れ。
気づいたら、やってた(笑)。
__
ここのお部屋は、開業する前はどんな感じだったの?
佐々木
元々は、うちのお父さんのこどもの頃の勉強部屋で、
外には五右衛門風呂があって。
その時代は、
ここは地下じゃなくて、裏もよく人が通ってたから、
1階として機能してたんだけど、
今はお年寄りが多いから、
地下(1階)はみんな物置みたいになって、
2階で暮らしてる、って感じ。
__
面白い立地だもんね。
県立美術館側からくると1階だけど、
岡山神社側からくると地下になっていて。
佐々木
ここは、改築するまでは、
50年くらいはずっと放置されたまま、物置になっていて、
もちろん和室で、板の間や襖とかがあって、押入れになってて。
家を支える柱や梁、縁側は残して、他のところは全部作り変えた。
__
ここは、ちょうどいいスペース?
佐々木
ちょうどいい(笑)。
__
開業して、何年だっけ?
佐々木
えっと、今、9年目。
__
早かった?
佐々木
あっという間(笑)。
__
あ、ほんと(笑)。
基本的に、女性がメインだったよね。
お客さまって、どんな方が多い?
佐々木
やっぱり、働かれていて、
疲れが溜まる30〜40代の方が多いけど、
最近20代の若い人も多い(笑)。
__
あ、そうなんだ。みんな疲れてる(笑)。
佐々木
みんな、すごい疲れてる(笑)。
__
ご年配の方もいる?
佐々木
ご年配の方もね、いらっしゃる。
__
じゃあ、幅広いんだね。
どうやって、ここを知って来られる方が多い?
佐々木
ねぇ、それが分かんなくて(笑)。
何にも出してないし。
__
最初は、のんちゃんの知り合いを通じて、みたいなところから始まって?
佐々木
うん。そうそう。
でもほんとに今は、来てくれている人が、周りの疲れてる人に、こっそり教えて、
みたいな口コミだけかなぁ…。
__
すごいね。
佐々木
ねぇ。有り難いことに。
__
何人くらい顧客がいるとか、把握してる?
佐々木
顧客はねぇ、えー、何人くらいだろう?
サロン時代から数えると、
施術をやったのは、15,000人くらいはやってるんだけど。
あんまりこだわらないから、
何年か経ったら、名簿、捨てちゃうようにしてて(笑)。
あんまり固執してもダメだと思って。
__
それは、お客さまに対して?
佐々木
うん。
DMとかも送らないし。
__
そのスタンスの方が、お客さまも、楽だったりするのかな?
佐々木
楽だったりすると思う。
__
その、「こだわらない」っていうところに、こだわりはあったりするの?
佐々木
こだわらないことが、こだわり(笑)。
あんまり…、宣伝は…、しないなぁ…。
必要な人は見つけてくれるから、勝手に(笑)。
__
来る者拒まず、去る者追わず(笑)。
佐々木
そう(笑)。
__
そういうスタンスになったのは、
インドやタイに行ったりしてることが影響ある?
佐々木
それは、あると思う。
ヨガとか始めて、
何かに執着することや手放すことを知って、
すごい自分も楽になったから。
そういうモノとか、人とかには、
あんまり、執着はしてない(笑)。
__
今、一番多く行くのはどこ?
佐々木
行くのは、タイ。
__
行き出したきっかけは?
佐々木
行き出したきっかけはねぇ…、自由になりたかった(笑)。
__
(笑)。
何から?
佐々木
何だろう(笑)。
やっぱり、日本にいたら、
ひとりで営業してるのに、きちんとしないといけないとか、
顧客管理とか、なんか…。
__
見えないプレッシャーみたいな?
佐々木
そうそう。
見えないプレッシャーみたいなのを引きずってて、
「あ、これは、サロンにいるときと働き方、変んないな」と思って。
で、それを1回リセットしないと、自分がもたないなと思って。
精神的にも、肉体的にも。
__
きっと、お客さまに対して、真面目にちゃんとやりたい、
っていう想いが強かったんだろうね。
佐々木
そうしてたの(笑)。
__
うん、分かる(笑)。
ひとりで自由にできるはずなのに、っていう葛藤があったのかな。
佐々木
なんか、しがみついてたから。
やっぱり、売上とか、お客さまとかにもね。
__
最初は、不安だもんね。
佐々木
うん。怖かったしね。
休むのも怖かったからね。
__
予約を断るとか?
佐々木
そうそう、断るとか。
休みの日も、開いてます、って言ったりとか、
すごい遅い時間まで働いてたりとか。
22時頃まで施術をやったりしてたから。
__
最初は結構、手探りというか。
早い段階で、「ヤバい」って思ったの?
佐々木
うん。ヤバいって思った。
なんかいきなり、3ヶ月目くらいでね、
お客さんがドワッと、急に来ちゃって、
わぁ、ってなって。
それで、身体もしんどくなったし。
あ、これはダメだと思って。
それで、無駄を省いていこうと思って。
__
タイがいいっていうことは、誰かに勧めてもらったの?
佐々木
それは、丸の内のマンションのタイヨガの先生の影響が大きくて。
でも、まだサロンで働いていたから、
そんなお気楽そうな暮らしはできないって思ってたけど、
忙しい中で、ふと思い出して、
「あ、ちょっと行ってみよう」って思って。
__
最初はひとりで?
佐々木
最初はね、そう、ひとりで。
__
行ってみて、どうだった?
佐々木
みんな優しかった。
__
タイには、知り合いがいたわけでもなく?
佐々木
そう。いなかったけど。
でも、なんかね、すぐ馴染めた(笑)。
でも、日本と文化が違うから、
こんなにゆるくていいのかな、みたいなのはあった。
授業でも、眠かったら、
じゃあお昼寝の時間をとりましょう、みたいな。
金曜日の夜になったら、
先生が遊びに連れて行ってくれたりとか(笑)。
__
タイの、一番いいなって思うところって、どんなところ?
佐々木
なんだろう。
「マイペンライ」っていう言葉があって、
何でも「大丈夫」で済ます、っていう(笑)。
__
とりあえず、大丈夫(笑)。
佐々木
そう。言っとく、っていう(笑)。
初めてタイに行ったときが、すごい洪水が起こったときで、
私がいた田舎の方は大丈夫だったんだけど、
街の方は、スタバも、膝くらいまで浸かっちゃってて。
でも全然、先生とかも慌ててなくって。
テレビもなかったし、全然情報も入ってこないから、
すごい平和だったの。
そしたら、日本から、逆輸入で情報が入ってきて、
「大丈夫?大丈夫?」みたいな。
それで、不安になった。
__
あ、逆に?
佐々木
うん。
でも、タイにいたら、誰も、何も、心配してない。
__
大丈夫。マイペンライ。
佐々木
マイペンライ(笑)。
お気楽。
__
その、マイペンライな考え方って、どういうとこからきてるんだろうね。
佐々木
ねぇ。
でも、温かい国って、そうなのかも。
沖縄とかも、「なんくるないさぁ」とかね。
タイでは、怒るとか、急ぐこととか、
そんなにいいことじゃないって言われてるから。
怒る人とかも、滅多にいないし。
ほほえみの国だからね。
__
年に、何回くらい行ってるの?
佐々木
年に、3,4回くらいかな。
インドとタイに行ってて。
冬は必ず長期で。
__
それは、勉強で?
佐々木
勉強もあるし、インドではヨガの修行もあるし。
あとは、リラックスというか、ゆるみに行くっていうのもある。
自分を整えに行く、っていうのが、第一前提、というか。
__
チューニングしに行く場所って感じ?
佐々木
うんうん。そうそう。
__
じゃあ、インドやタイに行って、
戻ってきたら「現実」っていうか、
「日常」が待ってるって感じなんだね。
ギャップを感じたりすることはある?
佐々木
やっぱり、みんなからの「大丈夫なの?」みたいなのは(笑)。
家族とか友達とかは、全然だけど、
なんかそういう「目」とかは、すごい感じることがあるけど。
__
ん?
それは、何?
佐々木
なんかね、空港でよく捕まるの(笑)。
__
(笑)。
知り合いに?
佐々木
ううん。
空港の人が、1ヶ月とか2ヶ月とか仕事を休んで、
タイとかインドにいて、何をしてるんですか、
みたいな誘導尋問。
__
あ、怪しまれるんだ!
佐々木
そうそう。
だから、まだこの生き方は、社会的にはダメなんだな、
とかは、時々思ってるけど。
__
主流じゃないってことか。
佐々木
うん。
まぁでも、自分の中では、もう、主流になってきてるから、
働き方がみんなと違っても、これが自分の道だな、と思ってる。
__
自分の道を見つけたのね。
佐々木
そうそう。
__
自分の道をみつけてから、結構経つの?
佐々木
いや、でも、最初にインドに行ってからだから、
まだ2、3年とかかなぁ。
__
今、SNSとかがあるから、
知りたくなくても、情報がいっぱい入ってくるでしょ。
そんな中で、「私はこれでいい」っていうスタイルをブレずにやるって、
しんどいときもあるんじゃない?
佐々木
うん、あるある。
だから、ダーっと流れてくるものに飲まれないように、
SNSとかはなるべく見ないようにして、
情報は、欲しいキーワードを入れて、
自分からチョイスするようにしてる。
__
意識して、そうやってるだけで、違う?
佐々木
うん。
それは、全然、違う。
__
1日に、多い時で何人くらい施術するの?
佐々木
今、3人って決めてる。
__
時間にかかわらず、1日3人?
佐々木
うん。3人。
__
そのペースも、今までやってきて、見つけたものなんだ。
佐々木
そうです。
__
ベスト?
佐々木
そう、ベスト(笑)。
__
少し時間が空いたら、自分の時間に充てたりすることもあるの?
佐々木
うん。
でも、自分がベストな状態で臨みたいから、
来る前に準備もするし、瞑想とかもするから、
ひとりに3時間とか4時間を懸けるの。
だから、9時間とかは働いているので、
そう思うとね、これ以上は無理かな。
__
そうだね。今の話を聞いたら。
佐々木
施術時間が1人平均2時間だから、
前後で休憩入れて、準備して、瞑想とか入れたら、
1人に、だいたい3時間とか4時間懸かるから。
みんな、その施術の時間だけをみて、
すごいお気楽に暮らしてるねとか、
暇な時間は何してるのとか言われるんだけど、
暇な時間ないよって(笑)。
時間が空いて、そこで遊んじゃったりすると、
ブレるから、集中ができなくなるから、
やっぱりその都度、
ヨガしたり、瞑想したりして、整えてから、
次のお客様に入るようにはしてます。
__
シャットダウンするすべというか。
>佐々木
ON、OFF、ON、OFF。
__
うんうん。
切り替えが大事そうだね。
佐々木
うん。大事。
準備の方が大事。
始まっちゃったら、別に、そんなに。
__
それは、施術の前に、自分の体調とか、
気の流れを整えるのが大事ってこと?
佐々木
うん。
邪気払いじゃないけど、
やっぱり、疲れた方が来られるから、
クリアにしといた方が、
その人を楽にしてあげられるかな、と思うので、
自分が疲れてない状態に整える。
自分が疲れてたら、施術はやるべきじゃない、
触るべきじゃないと思っているから。
__
体調が悪い時って、人間だからあるでしょ。
整わないときは…。
佐々木
準備をしてるから、基本、整わないってことはない。
__
昔は、整わないってこともあったの?
佐々木
もちろん。
ずっと整ってなかったと思う(笑)。
でも今は、整わない方がないと思う。
万全じゃないときのほうが、ない。
__
それは、ヨガの効果なの?
佐々木
なんだろう。
ヨガとか、瞑想とかかな?
瞑想は、お客さんが来る前に、必ず20分くらいするし。
インドに行くと、1時間とかは毎日かならずやるし。
__
瞑想いい?
佐々木
瞑想いい。めちゃめちゃいい。
全部、問題は解決すると思う(笑)。
__
自己解決、ってこと?
佐々木
なんかね、理由はわからないけど、
やっぱり、自分の波動が上がるというか、クリアになるから、
周りの人も変わってくるし、周りにもし、嫌な人とかがいたら、
嫌な人が嫌な人じゃなくなるし、嫌な人がひゅ~っと…。
__
いなくなるというか…。
佐々木
そうそう。
で、いい人が集まってきたりして、
自分がすごく暮らしやすくなるというか。
ただ瞑想してるだけで。
__
面白いね。
佐々木
もう、すごい。
それで、いろいろ、楽になってる(笑)。
__
お勧め?
佐々木
お勧め。
もう、随分違うと思う。
3分でも5分でもいいから、ここでやる、みたいなスペースを決めて、
正座して、きれいに背骨を整えて、座るだけでもね。
目をつむって、座って、呼吸の音を聞いとくだけでも、全然違う。
__
そうやって、自分の整え方についてもプロフェッショナルになっていき、
仕事との関わり方とかが変わることで、暮らし方とか生活が変わったりして、
自分のスタイルっていうのが、ここ2、3年で確立されてきた感じ?
佐々木
そうですね。
__
お客さまとの関わり方も変わったりする?
佐々木
お客さまも、自分に必要な人が来てくれるから、
トラブルとかがないから、すごく楽かな。
__
じゃあ、ほんと、今はベストな感じだね。
佐々木
うん。ベスト。
20代は色々しんどかったし、肉体的にもすごく疲れてたし。
色んなことが多すぎたというか。
__
20代は、わずらわされることや興味があるものが、いっぱいあったってこと?
佐々木
そうそう。
でも、自分でそれをチョイスして並べてたんだけど、
ちょっと欲張りすぎてたのかなと思う。
いろんなことに手を出しちゃったから。
それこを、DJやったり、イベントとかもいっぱいやってたから。
でもなんか、疲れちゃったのかな。見えてきたというか。
全部、そぎ落として、本当にシンプルになってきた感じ。
だから、今は暮らしもすごくシンプルになってて、ベストかな。
__
今は、マッサージと、ヨガもここで?
佐々木
うん、ヨガも。
週2回。
少人数で。
__
最初、タイ式マッサージからスタートして、ヨガも教えるようになったのは、
自分がやってて気持ち良かったから?
佐々木
自分で自分を整えて欲しいと思って。
自分が良かったから。
人にやってもらうのも、もちろん、ご褒美的に気持ちいいけど、
やっぱり、自分で自分をコントロールできるようになったら、
すごく暮らしやすいなと思って。
忙しい方とかに、ちょっとでも休息とか、
ゆるむ時間っていうのをつくってあげたくて。
大きいスタジオでやるのが苦手な方もね、いるから。
なんか、すごい疲れてるのに、沢山人がいるところで、
気を使ってニコニコしたりするのもね。
__
そういうの、あるよね。
疲れたくないのに、疲れるところに行かないといけないというね。
佐々木
なんかね。
で、そこで、キラキラしなきゃいけない、みたいな、
なんかそういうのがしんどくなった人とか向け(笑)。
__
逃げ場じゃないけど(笑)。
ここなら別に頑張らなくてもいいよ、って。
庵は、おたすけスポットというか、
リセットできるような場所になってるのかな。
佐々木>
うん、そうそう。
ゆるむ場所として。
ヨガって、スポーツじゃないから、
人と競ったり比べたりってことがないから、
それを知ってほしいというか。
やっぱり、お仕事とかしてたら、
競って、売上とか、人の目とかもあると思うから、
全部それを取っ払って、
自分のために、時間をつくって欲しかったというか。
__
今後も、タイやインドには定期的に行きつつ、みたいな感じ?
佐々木
そうですね。
__
それこそ、いっそのこと、向こうに住みたいとか思ったりする?
佐々木
ねぇ。
でもね、やっぱり住むのはね、日本がいい。
__
そう。
それは、違う?
佐々木
うん。出石がいい(笑)。
やっぱり、好きだからね(笑)。
__
出石町のどんなところが好き?
佐々木
街からの距離も、ちょうどいいし、
自然も近くにあって、後楽園とかも近いし。
大きな街じゃなくて、身の丈に合った感じが、
自分にはちょうどいいと思っていて。
小さい個人のお店が頑張ってたりとかするのも、自分の励みにもなるし。
なんか、ちょうどいい。
__
たしかに。
出石町は、中心市街地にあるんだけど…。
佐々木
ちょっと外れてる。
__
そうよね。
この静かさは、なんだろうね。
佐々木
おじいちゃんおばあちゃんがいっぱいいるから、
土日がすごく静かだったりとか。
観光客の方は通るけど、お店は閉まってたりするんだけどね(笑)。
そこもなんか、ブレてないというか(笑)。
土日を頑張って開けないところが良かったり。
みんな自分のペースで。
__
昔からずっと住んでる方が多いんだ。
佐々木
そういう方が多いから、日曜日は休む、とか。
早めに仕舞う、とか。
__
自分の生活を大切にしながら。
佐々木
そう。
ここら辺は、生活と一緒にやってる人がほとんどだから。
__
もう、密着してるのね、仕事と暮らしが。
生活の知恵なのかな。
無理したら、続かないもんね。
佐々木
うん。そうそう。
__
じゃあ、ベストな場所で、ベストなやり方を見つけたのね。
佐々木
そうそう。
たまたま。
この地下室にも、ほとんど入ったことなかったけど。
__
やるまで?
佐々木
そう、やるまで。
古民家を探してた時に、
そういえば、
おじいちゃんとおばあちゃんのうちに地下室があったはず、
と思って、見に行って。
そしたら、バーッて全部思い浮かんで、
「あ、出来る!」と思って。
__
閃いたんだ!
佐々木
そう。閃いて。
__
こんな身近に、って。
佐々木
で、家族に「ください」って(笑)。
お願いして。
自分でお金をだすから、
ここを、そういう場所に改装させてくださいって。
でも、こんな地下だし、
家族は「こんな地下に、お客さんは来るのか」って。
__
そっちの心配?
佐々木
もうちょっと、いいところというか、
パッとしたところですれば、みたいな(笑)。
__
人目につくような?
佐々木
でも私は、疲れたひとはきっと、
こういう薄暗いところの方が落ち着くと思ったから
「ここでやってみたいんだ」って言ったら、「わかった」って。
__
今は、みんな応援してくれてる感じ?
佐々木
うん。
__
この先また、あらたにやりたいこととか出てきそう?
佐々木
家族でできるマッサージとかをこどもに教えたら、
こどもたちと家族のスキンシップの方法が増えたりとか、
おうちで楽しめることが増えたりするんじゃないかな、とか。
タイのこどもたちって、すごくマッサージが上手で、
お母さんとおうちの中で、いつもベタベタスキンシップをとってて、
その中でマッサージを学んでるので、すごい手つきとかも上手で。
__
そういう学びが、日常の中にあるんだね。
素敵。
佐々木
習ってなくても、そういうことが出来るから。
日本のお父さんお母さんも疲れてるからね(笑)。
__
こどもも、お父さんお母さんに喜んでもらえたら嬉しいし、
親御さんにとっては、癒しにもなる(笑)。
佐々木
そうそう。
あと、こどももすごいストレスを抱えてるから。
こどもも来るんだよ、ここ。小学生とか(笑)。
__
へぇー。凝ってたりするの?
佐々木
うん。凝ってたりとか、癇癪が溜まるというか。
イライラするんだって。
それで、ここでほぐすと、しばらく家庭が平和だからって。
頭痛のある子もすごく多いし。
自分が緊張状態にいることを分かってないから、こどもは。
だけど、塾とかも多いし、気が休まるところがなくて。
こども同士でも、気をつかって人間関係を築いてるから、すごい疲れてて。
ちょっと足をもんであげるだけでも、すぐコテっと寝ちゃうんだけど。
__
こどもの社会も大変なのね。
佐々木
大変そう。
__
何かを、我慢してるんだ。
佐々木
我慢してるけど、それがわからなかったりとか。
__
無自覚で。
佐々木
我慢してるのが、当たり前だと思っちゃうの。
それで、そのまま大人になっちゃったら、
我慢しかしない人生になっちゃうから。
自分のやりたいことを我慢して、
他のひとに合わせすぎちゃったりとか。
あと、お母さんが言うから、この会社は間違いないなとか、
お金もらってるんだから、
これくらいのしんどいことは当たり前なのかな、とか。
__
我慢が当たり前の人生。
そしてそれに無自覚って、怖いね。
自分で判断が出来なくなるとか、
そういうことにも繋がっていくんだ。
身体を整えることとか、マッサージやヨガって、
すごく暮らしに密着してて、とっても大事なのね。
佐々木
うん。
すごく、必要だなと思ってる。
__
岡山カルチャーゾーンの中でも、
地域ごとにそれぞれ特徴やカラーが違うと思うんだけど、出石はどう?
佐々木
丸の内に住んでた時も、隣町だけど、全然違う。
出石は、まだ古い建物とかも残っていて、
昔から住んでる方とかもいっぱいいるので、
できたら、すごく変わりすぎないで欲しいというのは思うんだけど、
空き家とかも結構あったりするから、
そういう場所をうまく使って、
盛り上げてもらえたりしたら、面白いかなとは思う。
__
1階でお商売して、2階が住居で、
みたいな街の特徴やスタンスを共有できるような人が入って、
同じような空気感で一緒にいられるような。
佐々木
そういう空気感で。
やっぱり、このまったり感は大事にしたい。
いきなりスピード感のあるものが入ってきたら、
ちょっと怖いな、っていうのはある。
__
びっくりしちゃうよね。
佐々木
おばあちゃんとかがね(笑)。
__
腰抜かしちゃうかもしれないもんね(笑)。
佐々木
出石は今でも、お綱祭りとか、
水の神様を鎮めるお祭りの水神さん(水神まつり)とか、
昔からのお祭りとかもきちんとあって。
お綱祭りは、太い綱を三つ編みにして、龍を作って、
それを岡山神社まで引っ張って行って、納めるの。
すっごい重いし、力がいる仕事だから、
めちゃくちゃ男手が必要なんだけど、若い人が少ないから大変で。
あと、うちのお父さんも、
出石町の獅子舞(岡山市指定重要無形民俗文化財 備前太鼓歌)とかやってるけど、
そういうのもね、みんなだいぶご高齢になってきてるし、男手がいるから(笑)。
そういうのを無くさず、続けていけたらなと思っていて。
__
大事な伝統文化だもんね。
担い手不足は、深刻な問題かもしれないね。
獅子舞も以前参加してもらったけど
石山公園で一緒にやってた
「後楽の森と川パークマーケット」への思いってある?
佐々木
あれは、ほんとに最初からみんなの反応が良かったし、
出てくれた出店者の方もすごい良かったし、
お客さんからも、「次、いつやるの」とか、
生の声がすごいリアルに聞こえたイベントだったから、
すごい良かったなぁ、と思う。
__
うん。
今少し、見直しの時期ということで休憩にしてるけど、
また少し時間を置いてね。
佐々木
仕切り直してね、またやれたらいいな。
みんな期待してるから。
__
最近も、聞かれたりする?
佐々木
うん。聞かれたりします。
「パークマーケット、次はいつですか?」って。
友達もたくさん出店してくれてたから、期待してたりして。
ああいうイベントだったら、
出石町のおじいちゃんやおばあちゃんとかも行きやすいから、
みんな来てくれてたし。
みんな楽しめるというか、こどももすごく多かったし。
__
うん。
パークマーケットは、
地域の中にある公園が、性別も職業も年代も問わず楽しめる、
ゆるやかなコミュニティの場所になれば、という感じのコンセプトで、
出店していただくブースのセレクト感とか、
多少狙ったところもあるけど、
狙い以上にゆるやかで、おおらかで、いいイベントに成長したよね。
佐々木
うん。
ちょうどいい感じだった。
空気感、すごく良かった。
__
ね。絶妙な加減。
なんだろうね。
やっぱり、場所が持つ力もあるのかもしれないけどね。
あの、解放感とか、規模感とかね。
佐々木
あの場所を、
「あ、こういうふうにも使えるんだ」っていう
モデルのケースにもなったと思うし。
__
そうだよね。
佐々木
それまでって、公園として、あんまり機能してなかったというか。
うちは近所だから、友達とか家族で、
おにぎり握って、ピクニック気分で出かけて行って、お外で食べたりするんだけど、
わたしたち以外って、外国人しかくつろいでないというか。
日本人は、写真を撮ったりはするけれど、
芝生でくつろいだりとか、ベンチでのんびりしたりとか、本を読んだりとかっていうのは、
あんまりやらないみたいだから、もったいないなと思って。
だから、ああいうイベントが定期的にあったら、もっと使い方に幅が広がるというか。
__
場所の魅力や使い方を知ってもらって、日常の行動につなげてもらえるもんね。
佐々木
うん。
もっと、ごろごろしたらいいのに、と思って。
だから私は、ヨガマット持って行ってヨガをやったりとかもするし、
夜のお散歩とか、のんびりしに行ったりするんだけど。
__
公園って、本来そういう自由な場所だもんね。
佐々木
だけど、なんかみんなかしこまってて、ダラッとはしてないから。
せっかく芝生もあるし。
もうちょっと、なんかね。
__
そうね。
公共のオープンスペースでのくつろぎ方が上手じゃないのかな?
去年、利用者へのニーズ調査をした時に、
ただの通り道になってる、っていうことがよく分かって。
佐々木
そうそう。
そういう感じがある。
__
だから、のんちゃんみたいに使い方が上手な人は、
公園での楽しみを自分で発見できるけど、
そうじゃない人はみんな、あそこに、目的を持って行ってないというか。
目的は、石山公園の、その先にだけあって。
佐々木
そのついで、みたいな。
それもったいないな。
__
もったいないよね。
あそこに、リニューアルしたら常設のカフェが出来る予定なんだけど、
それが公園に行くきっかけのひとつになるといいんだけどね。
佐々木
こどもの頃、
ステージの周りには、1日中、すごくきれいな水がたっぷり流れてて、
いつも水の中で遊んでたの。
ステージの裏にも流れていて、すごく涼しかったし。
__
それが、公園の目玉になってたんだ。
佐々木
小学生のころは、入っちゃダメとかなかったから、
近所の子とか、いっぱい入ってた。
夏は、夕方になったら、涼みにくる人とかもいて。
水が止まって、もう随分経つけど。
__
せっかく、そういう、公園に行くきっかけになるものがあったのに、
上手く使えていなくて残念だし、もったいないね。
佐々木
うん。もったいないと思う。
こどもが遊んだら危ないから、とか、そういうのもあったりして、
こどもだけで行かせないようにとか。
まちなかは、今すごくこどもが増えてて、
中央小学校とかも、マンモス校になってるんだけど、
今、こどもたちには遊び場がない。
__
小学生とか、今、
学校が終わったあとに、自由に校庭で遊んだりできないらしいね。
だから、こどもたちが遊びやすい場所になってもいいかもしれんね。
佐々木
そう。安全でね。
__
うん。
お母さんたちは、こどもと一緒に公園行ったついでに、
カフェでコーヒー飲んでのんびりするとかね。
佐々木
うん。
目の届く範囲で、こどもたちが遊べて。
__
こどもも遊べて、
お母さんたちも、息抜きやリラックスができる場所って、
いいかもしれんね。
佐々木
なにか、ひとつでもいいから、
こどもが「これがあるから遊べる」っていうものがあるといいな。
オブジェ兼遊具、みたいなもの。
こどもランドみたいにする必要はないけど、
大人が見ても面白いカタチで。
__
こどもに優しい公園、っていうのも、
視点として、ひとつあってもいいよね。
佐々木
緑は、そのままで。
手を入れすぎず。
__
そうだね。
景観を生かすために整える必要はあると思うけど、
まちなかに、こんなに緑豊かな場所があるというのは、
とっても貴重な気がするよね。
あとは、イベントをやるときに必要な最低限の機能とか、
歩きやすさや、安全面への配慮とかね。
ロケーションの良さや、今の公園の良さを残しながら、絶妙なバランスでね。
それで、目的を持っていけるきっかけになるようなものがあって、
みんながくつろげる場所になるといいね。
佐々木
うん。
こどもも楽しめる場所。
__
うん。そうだね。
この声が届くといいね。
佐々木 彩乃(ささき あやの)
地下室リラクゼーション庵un
岡山市北区出石町1-2-33
086-222-3667
受付時間:9:00~19:30
休日:不定休
WEBサイト ▷「地下室リラクゼーション庵unのslow+通信」
インタビュー・写真
石井 範子(ENNOVA OKAYAMA)