ブレない強さを身につけて
疲れた心と身体に向き合う
出石町のしなやかな暮らし 

002 「 地下室リラクゼーション庵un 佐々木 彩乃 」

2018年8月23日

プロフェッショナル。
そんな言葉がぴったりだと思った。
岡山後楽園の対岸にある出石町は
岡山空襲を逃れた明治・大正時代のレトロな街並みが残り
路地の中にある隠れ家のように
そっと街に溶け込む「地下室リラクゼーション庵un」。
ほんのり薄暗くリラックスできる地下空間では
口コミで評判を呼び、連日、疲れを癒すために訪れた人々に対して
その身体と真摯に、丁寧に向き合いながら
心地よいタイ式マッサージで手当てしてくれる“のんちゃん”こと佐々木彩乃さん。
ここ数年は、岡山とタイやインドを行き来しつつ
ゆるやかさとストイックさを絶妙のバランスで保ちながら
自分らしくいられるペースを見つけた彼女の
その暮らし方・働き方、地域への思いを伺いました。

 

 

_________________________________________________________

 

 

佐々木 

元々ここは、おじいちゃんとおばあちゃんのおうちで、
こどもの頃は週末には必ずここに来てて。
それで、10年前に移ってきて、住み始めたんだけど。
それと同時に庵も開業した感じで。

 

__

以前から、ずっと同じ職種の仕事をしてたの?

 

佐々木 

ううん。
前は、アパレル。
アパレルで2年くらい働いて、
リラクゼーションサロンで4年働いて、
それで独立したの。

 

__

天職な感じする?

 

佐々木 

天職だと良いんですけど。

 

__

アパレルからサロンに転職する時って、何かきっかけがあったの?

 

佐々木 

多分、癒されたかったんじゃないかな、自分がね(笑)。
それまで、マッサージは受けたことがなかったんだけど、
たまたま、本か何かで、リラクゼーション業界みたいなのを見つけて、
行ってみたら、わぁ、ってなって。
あ、勉強してみよう、って思って。

 

__

そういうきっかけだったんだね。

 

佐々木 

アパレル時代に働きすぎて、
身体を壊したっていうのもあるから、
その時代にこういうのを知ってたら、
自分でケアしたり通ったりできたのかな、
同じような人多いだろうな、と思って。
今女性も、よく働くから。
だから、これ自分に必要だから、
周りの人にも必要だな、と思って。
それで、やってみようかなって。

 

__

サロンでは、独立を目指して働いている人とかが多いのかな?

 

佐々木 

その当時は、転職組が多かったから、
何か手に職をつけたい、みたいな人が多く働いていて。
でも、私が独立したのは、たまたまかな(笑)。

 

__

あ、そうなんだ(笑)。

 

佐々木 

うん。
たまたまというか、
ここがあったから、っていうのもあるし。
古いおうちとかが好きだから、
ずっと探してたけど、なかったし。
その当時住んでいた丸の内のマンションで開業する、
っていうのも考えたけど、
なんかしっくりこなかったし。

 

__

あのマンション、何か店舗が入ってなかったっけ?

 

佐々木 

上の階に、完全予約制の飲食店が入っていたのと、
うちの部屋の前には、タイヨガのサロンがあって、
タイのことはそこで知ったの(笑)。

 

__

あ、そうだったんだね(笑)。

 

佐々木 

その当時、アパレルやサロンがすごく忙しかったから。
せかせか働いていて、
もうちょっと自分らしく時間を使ったりとか、
きちんとお客さんに向き合いたい、
っていうのもあって。
そしたら、そのお向かいさんが、
ゆる~いタイのヨガをやっていて、
そこのお姉さんが、「いいわよぉ」って(笑)。
すごくゆるっと暮らしてたので、
「あ、タイに行ったらこうなれるのかな」と思って(笑)。

 

__

サロンとかだと、時間がきちきちっと、って感じ?

 

佐々木 

そう。きちきち。
忙しくて、トイレにも行けないくらい施術が詰まって、
ご飯とかも、ちゃんと食べられなかったから。

 

__

じゃあ、逆に体調壊したりとか?

 

佐々木 

壊して、辞めた(笑)。
だから、しばらくは出来ないかなぁ、と思ってたけど、
辞めたらすぐ治ったから、すぐ工事して。

 

__

働いていた時に、最初から独立を意識していたわけじゃないけど、
やってる中で、自然な流れでなんだ。

 

佐々木 

自然な流れ。
気づいたら、やってた(笑)。

 

__

ここのお部屋は、開業する前はどんな感じだったの?

 

佐々木

元々は、うちのお父さんのこどもの頃の勉強部屋で、
外には五右衛門風呂があって。
その時代は、
ここは地下じゃなくて、裏もよく人が通ってたから、
1階として機能してたんだけど、
今はお年寄りが多いから、
地下(1階)はみんな物置みたいになって、
2階で暮らしてる、って感じ。

 

__

面白い立地だもんね。
県立美術館側からくると1階だけど、
岡山神社側からくると地下になっていて。

 

佐々木

ここは、改築するまでは、
50年くらいはずっと放置されたまま、物置になっていて、
もちろん和室で、板の間や襖とかがあって、押入れになってて。
家を支える柱や梁、縁側は残して、他のところは全部作り変えた。

 

__

ここは、ちょうどいいスペース?

 

佐々木

ちょうどいい(笑)。

 

__

開業して、何年だっけ?

 

佐々木

えっと、今、9年目。

 

__

早かった?

 

佐々木

あっという間(笑)。

 

__

あ、ほんと(笑)。
基本的に、女性がメインだったよね。
お客さまって、どんな方が多い?

 

佐々木

やっぱり、働かれていて、
疲れが溜まる30〜40代の方が多いけど、
最近20代の若い人も多い(笑)。

 

__

あ、そうなんだ。みんな疲れてる(笑)。

 

佐々木

みんな、すごい疲れてる(笑)。

 

__

ご年配の方もいる?

 

佐々木

ご年配の方もね、いらっしゃる。

 

__

じゃあ、幅広いんだね。
どうやって、ここを知って来られる方が多い?

 

佐々木
ねぇ、それが分かんなくて(笑)。
何にも出してないし。

 

__

最初は、のんちゃんの知り合いを通じて、みたいなところから始まって?

 

佐々木

うん。そうそう。
でもほんとに今は、来てくれている人が、周りの疲れてる人に、こっそり教えて、
みたいな口コミだけかなぁ…。

 

__

すごいね。

 

佐々木

ねぇ。有り難いことに。

 

 

__

何人くらい顧客がいるとか、把握してる?

 

佐々木

顧客はねぇ、えー、何人くらいだろう?
サロン時代から数えると、
施術をやったのは、15,000人くらいはやってるんだけど。
あんまりこだわらないから、
何年か経ったら、名簿、捨てちゃうようにしてて(笑)。
あんまり固執してもダメだと思って。

 

__

それは、お客さまに対して?

 

佐々木

うん。
DMとかも送らないし。

 

__

そのスタンスの方が、お客さまも、楽だったりするのかな?

 

佐々木

楽だったりすると思う。

 

__

その、「こだわらない」っていうところに、こだわりはあったりするの?

 

佐々木

こだわらないことが、こだわり(笑)。
あんまり…、宣伝は…、しないなぁ…。
必要な人は見つけてくれるから、勝手に(笑)。

 

__

来る者拒まず、去る者追わず(笑)。

 

佐々木

そう(笑)。

 

__

そういうスタンスになったのは、
インドやタイに行ったりしてることが影響ある?

 

佐々木

それは、あると思う。
ヨガとか始めて、
何かに執着することや手放すことを知って、
すごい自分も楽になったから。
そういうモノとか、人とかには、
あんまり、執着はしてない(笑)。

 

__

今、一番多く行くのはどこ?

 

佐々木

行くのは、タイ。

 

__

行き出したきっかけは?

 

佐々木

行き出したきっかけはねぇ…、自由になりたかった(笑)。

 

__

(笑)。
何から?

 

佐々木

何だろう(笑)。
やっぱり、日本にいたら、
ひとりで営業してるのに、きちんとしないといけないとか、
顧客管理とか、なんか…。

 

__

見えないプレッシャーみたいな?

 

佐々木

そうそう。
見えないプレッシャーみたいなのを引きずってて、
「あ、これは、サロンにいるときと働き方、変んないな」と思って。
で、それを1回リセットしないと、自分がもたないなと思って。
精神的にも、肉体的にも。

 

__

きっと、お客さまに対して、真面目にちゃんとやりたい、
っていう想いが強かったんだろうね。

 

佐々木

そうしてたの(笑)。

 

__

うん、分かる(笑)。
ひとりで自由にできるはずなのに、っていう葛藤があったのかな。

 

佐々木

なんか、しがみついてたから。
やっぱり、売上とか、お客さまとかにもね。

 

__

最初は、不安だもんね。

 

佐々木

うん。怖かったしね。
休むのも怖かったからね。

 

__

予約を断るとか?

 

佐々木

そうそう、断るとか。
休みの日も、開いてます、って言ったりとか、
すごい遅い時間まで働いてたりとか。
22時頃まで施術をやったりしてたから。

 

__

最初は結構、手探りというか。
早い段階で、「ヤバい」って思ったの?

 

佐々木

うん。ヤバいって思った。
なんかいきなり、3ヶ月目くらいでね、
お客さんがドワッと、急に来ちゃって、
わぁ、ってなって。
それで、身体もしんどくなったし。
あ、これはダメだと思って。
それで、無駄を省いていこうと思って。

 

__

タイがいいっていうことは、誰かに勧めてもらったの?

 

佐々木

それは、丸の内のマンションのタイヨガの先生の影響が大きくて。
でも、まだサロンで働いていたから、
そんなお気楽そうな暮らしはできないって思ってたけど、
忙しい中で、ふと思い出して、
「あ、ちょっと行ってみよう」って思って。

 

__

最初はひとりで?

 

佐々木

最初はね、そう、ひとりで。

 

__

行ってみて、どうだった?

 

佐々木

みんな優しかった。

 

__

タイには、知り合いがいたわけでもなく?

 

佐々木

そう。いなかったけど。
でも、なんかね、すぐ馴染めた(笑)。
でも、日本と文化が違うから、
こんなにゆるくていいのかな、みたいなのはあった。
授業でも、眠かったら、
じゃあお昼寝の時間をとりましょう、みたいな。
金曜日の夜になったら、
先生が遊びに連れて行ってくれたりとか(笑)。

 

__

タイの、一番いいなって思うところって、どんなところ?

 

佐々木

なんだろう。
「マイペンライ」っていう言葉があって、
何でも「大丈夫」で済ます、っていう(笑)。

 

__

とりあえず、大丈夫(笑)。

 

佐々木

そう。言っとく、っていう(笑)。
初めてタイに行ったときが、すごい洪水が起こったときで、
私がいた田舎の方は大丈夫だったんだけど、
街の方は、スタバも、膝くらいまで浸かっちゃってて。
でも全然、先生とかも慌ててなくって。
テレビもなかったし、全然情報も入ってこないから、
すごい平和だったの。
そしたら、日本から、逆輸入で情報が入ってきて、
「大丈夫?大丈夫?」みたいな。
それで、不安になった。

 

__

あ、逆に?

 

佐々木

うん。
でも、タイにいたら、誰も、何も、心配してない。

 

__

大丈夫。マイペンライ。

 

佐々木

マイペンライ(笑)。
お気楽。

 

__

その、マイペンライな考え方って、どういうとこからきてるんだろうね。

 

佐々木

ねぇ。
でも、温かい国って、そうなのかも。
沖縄とかも、「なんくるないさぁ」とかね。
タイでは、怒るとか、急ぐこととか、
そんなにいいことじゃないって言われてるから。
怒る人とかも、滅多にいないし。
ほほえみの国だからね。

 

 

__

年に、何回くらい行ってるの?

 

佐々木

年に、3,4回くらいかな。
インドとタイに行ってて。
冬は必ず長期で。

 

__

それは、勉強で?

 

佐々木

勉強もあるし、インドではヨガの修行もあるし。
あとは、リラックスというか、ゆるみに行くっていうのもある。
自分を整えに行く、っていうのが、第一前提、というか。

 

__

チューニングしに行く場所って感じ?

 

佐々木

うんうん。そうそう。

 

__

じゃあ、インドやタイに行って、
戻ってきたら「現実」っていうか、
「日常」が待ってるって感じなんだね。
ギャップを感じたりすることはある?

 

佐々木

やっぱり、みんなからの「大丈夫なの?」みたいなのは(笑)。
家族とか友達とかは、全然だけど、
なんかそういう「目」とかは、すごい感じることがあるけど。

 

__

ん?
それは、何?

 

佐々木

なんかね、空港でよく捕まるの(笑)。

 

__

(笑)。
知り合いに?

 

佐々木

ううん。
空港の人が、1ヶ月とか2ヶ月とか仕事を休んで、
タイとかインドにいて、何をしてるんですか、
みたいな誘導尋問。

 

__

あ、怪しまれるんだ!

 

佐々木

そうそう。
だから、まだこの生き方は、社会的にはダメなんだな、
とかは、時々思ってるけど。

 

__

主流じゃないってことか。

 

佐々木

うん。
まぁでも、自分の中では、もう、主流になってきてるから、
働き方がみんなと違っても、これが自分の道だな、と思ってる。

 

__

自分の道を見つけたのね。

 

佐々木

そうそう。

 

__

自分の道をみつけてから、結構経つの?

 

佐々木

いや、でも、最初にインドに行ってからだから、
まだ2、3年とかかなぁ。

 

__

今、SNSとかがあるから、
知りたくなくても、情報がいっぱい入ってくるでしょ。
そんな中で、「私はこれでいい」っていうスタイルをブレずにやるって、
しんどいときもあるんじゃない?

 

佐々木

うん、あるある。
だから、ダーっと流れてくるものに飲まれないように、
SNSとかはなるべく見ないようにして、
情報は、欲しいキーワードを入れて、
自分からチョイスするようにしてる。

 

__

意識して、そうやってるだけで、違う?

 

佐々木

うん。
それは、全然、違う。

 

__

1日に、多い時で何人くらい施術するの?

 

佐々木

今、3人って決めてる。

 

__

時間にかかわらず、1日3人?

 

佐々木

うん。3人。

 

__

そのペースも、今までやってきて、見つけたものなんだ。

 

佐々木

そうです。

 

__

ベスト?

 

佐々木

そう、ベスト(笑)。

 

__

少し時間が空いたら、自分の時間に充てたりすることもあるの?

 

佐々木

うん。
でも、自分がベストな状態で臨みたいから、
来る前に準備もするし、瞑想とかもするから、
ひとりに3時間とか4時間を懸けるの。
だから、9時間とかは働いているので、
そう思うとね、これ以上は無理かな。

 

__

そうだね。今の話を聞いたら。

 

佐々木

施術時間が1人平均2時間だから、
前後で休憩入れて、準備して、瞑想とか入れたら、
1人に、だいたい3時間とか4時間懸かるから。
みんな、その施術の時間だけをみて、
すごいお気楽に暮らしてるねとか、
暇な時間は何してるのとか言われるんだけど、
暇な時間ないよって(笑)。
時間が空いて、そこで遊んじゃったりすると、
ブレるから、集中ができなくなるから、
やっぱりその都度、
ヨガしたり、瞑想したりして、整えてから、
次のお客様に入るようにはしてます。

 

__

シャットダウンするすべというか。

 

>佐々木

ON、OFF、ON、OFF。

 

__

うんうん。
切り替えが大事そうだね。

 

佐々木

うん。大事。
準備の方が大事。
始まっちゃったら、別に、そんなに。

 

__

それは、施術の前に、自分の体調とか、
気の流れを整えるのが大事ってこと?

 

佐々木

うん。
邪気払いじゃないけど、
やっぱり、疲れた方が来られるから、
クリアにしといた方が、
その人を楽にしてあげられるかな、と思うので、
自分が疲れてない状態に整える。
自分が疲れてたら、施術はやるべきじゃない、
触るべきじゃないと思っているから。

 

__

体調が悪い時って、人間だからあるでしょ。
整わないときは…。

 

佐々木

準備をしてるから、基本、整わないってことはない。

 

__

昔は、整わないってこともあったの?

 

佐々木

もちろん。
ずっと整ってなかったと思う(笑)。
でも今は、整わない方がないと思う。
万全じゃないときのほうが、ない。

 

__

それは、ヨガの効果なの?

 

佐々木

なんだろう。
ヨガとか、瞑想とかかな?
瞑想は、お客さんが来る前に、必ず20分くらいするし。
インドに行くと、1時間とかは毎日かならずやるし。

 

__

瞑想いい?

 

佐々木

瞑想いい。めちゃめちゃいい。
全部、問題は解決すると思う(笑)。

 

__

自己解決、ってこと?

 

佐々木

なんかね、理由はわからないけど、
やっぱり、自分の波動が上がるというか、クリアになるから、
周りの人も変わってくるし、周りにもし、嫌な人とかがいたら、
嫌な人が嫌な人じゃなくなるし、嫌な人がひゅ~っと…。

 

__

いなくなるというか…。

 

佐々木

そうそう。
で、いい人が集まってきたりして、
自分がすごく暮らしやすくなるというか。
ただ瞑想してるだけで。

 

__

面白いね。

 

佐々木

もう、すごい。
それで、いろいろ、楽になってる(笑)。

 

__

お勧め?

 

佐々木

お勧め。
もう、随分違うと思う。
3分でも5分でもいいから、ここでやる、みたいなスペースを決めて、
正座して、きれいに背骨を整えて、座るだけでもね。
目をつむって、座って、呼吸の音を聞いとくだけでも、全然違う。

 

 

__

そうやって、自分の整え方についてもプロフェッショナルになっていき、
仕事との関わり方とかが変わることで、暮らし方とか生活が変わったりして、
自分のスタイルっていうのが、ここ2、3年で確立されてきた感じ?

 

佐々木

そうですね。

 

__

お客さまとの関わり方も変わったりする?

 

佐々木

お客さまも、自分に必要な人が来てくれるから、
トラブルとかがないから、すごく楽かな。

 

__

じゃあ、ほんと、今はベストな感じだね。

 

佐々木

うん。ベスト。
20代は色々しんどかったし、肉体的にもすごく疲れてたし。
色んなことが多すぎたというか。

 

__

20代は、わずらわされることや興味があるものが、いっぱいあったってこと?

 

佐々木

そうそう。
でも、自分でそれをチョイスして並べてたんだけど、
ちょっと欲張りすぎてたのかなと思う。
いろんなことに手を出しちゃったから。
それこを、DJやったり、イベントとかもいっぱいやってたから。
でもなんか、疲れちゃったのかな。見えてきたというか。
全部、そぎ落として、本当にシンプルになってきた感じ。
だから、今は暮らしもすごくシンプルになってて、ベストかな。

 

__

今は、マッサージと、ヨガもここで?

 

佐々木

うん、ヨガも。
週2回。
少人数で。

 

__

最初、タイ式マッサージからスタートして、ヨガも教えるようになったのは、
自分がやってて気持ち良かったから?

 

佐々木

自分で自分を整えて欲しいと思って。
自分が良かったから。
人にやってもらうのも、もちろん、ご褒美的に気持ちいいけど、
やっぱり、自分で自分をコントロールできるようになったら、
すごく暮らしやすいなと思って。
忙しい方とかに、ちょっとでも休息とか、
ゆるむ時間っていうのをつくってあげたくて。
大きいスタジオでやるのが苦手な方もね、いるから。
なんか、すごい疲れてるのに、沢山人がいるところで、
気を使ってニコニコしたりするのもね。

 

__

そういうの、あるよね。
疲れたくないのに、疲れるところに行かないといけないというね。

 

佐々木

なんかね。
で、そこで、キラキラしなきゃいけない、みたいな、
なんかそういうのがしんどくなった人とか向け(笑)。

 

__

逃げ場じゃないけど(笑)。
ここなら別に頑張らなくてもいいよ、って。
庵は、おたすけスポットというか、
リセットできるような場所になってるのかな。

 

佐々木>

うん、そうそう。
ゆるむ場所として。
ヨガって、スポーツじゃないから、
人と競ったり比べたりってことがないから、
それを知ってほしいというか。
やっぱり、お仕事とかしてたら、
競って、売上とか、人の目とかもあると思うから、
全部それを取っ払って、
自分のために、時間をつくって欲しかったというか。

 

__

今後も、タイやインドには定期的に行きつつ、みたいな感じ?

 

佐々木

そうですね。

 

__

それこそ、いっそのこと、向こうに住みたいとか思ったりする?

 

佐々木

ねぇ。
でもね、やっぱり住むのはね、日本がいい。

 

__

そう。
それは、違う?

 

佐々木

うん。出石がいい(笑)。
やっぱり、好きだからね(笑)。

 

__

出石町のどんなところが好き?

 

佐々木

街からの距離も、ちょうどいいし、
自然も近くにあって、後楽園とかも近いし。
大きな街じゃなくて、身の丈に合った感じが、
自分にはちょうどいいと思っていて。
小さい個人のお店が頑張ってたりとかするのも、自分の励みにもなるし。
なんか、ちょうどいい。

 

__

たしかに。
出石町は、中心市街地にあるんだけど…。

 

佐々木

ちょっと外れてる。

 

__

そうよね。
この静かさは、なんだろうね。

 

佐々木

おじいちゃんおばあちゃんがいっぱいいるから、
土日がすごく静かだったりとか。
観光客の方は通るけど、お店は閉まってたりするんだけどね(笑)。
そこもなんか、ブレてないというか(笑)。
土日を頑張って開けないところが良かったり。
みんな自分のペースで。

 

__

昔からずっと住んでる方が多いんだ。

 

佐々木

そういう方が多いから、日曜日は休む、とか。
早めに仕舞う、とか。

 

__

自分の生活を大切にしながら。

 

佐々木

そう。
ここら辺は、生活と一緒にやってる人がほとんどだから。

 

__

もう、密着してるのね、仕事と暮らしが。
生活の知恵なのかな。
無理したら、続かないもんね。

 

佐々木

うん。そうそう。

 

__

じゃあ、ベストな場所で、ベストなやり方を見つけたのね。

 

佐々木

そうそう。
たまたま。
この地下室にも、ほとんど入ったことなかったけど。

 

__

やるまで?

 

佐々木

そう、やるまで。
古民家を探してた時に、
そういえば、
おじいちゃんとおばあちゃんのうちに地下室があったはず、
と思って、見に行って。
そしたら、バーッて全部思い浮かんで、
「あ、出来る!」と思って。

 

 

__

閃いたんだ!

 

佐々木

そう。閃いて。

 

__

こんな身近に、って。

 

佐々木

で、家族に「ください」って(笑)。
お願いして。
自分でお金をだすから、
ここを、そういう場所に改装させてくださいって。
でも、こんな地下だし、
家族は「こんな地下に、お客さんは来るのか」って。

 

__

そっちの心配?

 

佐々木

もうちょっと、いいところというか、
パッとしたところですれば、みたいな(笑)。
 

__

人目につくような?

 

佐々木

でも私は、疲れたひとはきっと、
こういう薄暗いところの方が落ち着くと思ったから
「ここでやってみたいんだ」って言ったら、「わかった」って。

 

__

今は、みんな応援してくれてる感じ?

 

佐々木

うん。

 

__

この先また、あらたにやりたいこととか出てきそう?

 

佐々木

家族でできるマッサージとかをこどもに教えたら、
こどもたちと家族のスキンシップの方法が増えたりとか、
おうちで楽しめることが増えたりするんじゃないかな、とか。
タイのこどもたちって、すごくマッサージが上手で、
お母さんとおうちの中で、いつもベタベタスキンシップをとってて、
その中でマッサージを学んでるので、すごい手つきとかも上手で。

 

__

そういう学びが、日常の中にあるんだね。
素敵。

 

佐々木

習ってなくても、そういうことが出来るから。
日本のお父さんお母さんも疲れてるからね(笑)。

 

__

こどもも、お父さんお母さんに喜んでもらえたら嬉しいし、
親御さんにとっては、癒しにもなる(笑)。

 

佐々木

そうそう。
あと、こどももすごいストレスを抱えてるから。
こどもも来るんだよ、ここ。小学生とか(笑)。

 

__

へぇー。凝ってたりするの?

 

佐々木

うん。凝ってたりとか、癇癪が溜まるというか。
イライラするんだって。
それで、ここでほぐすと、しばらく家庭が平和だからって。
頭痛のある子もすごく多いし。
自分が緊張状態にいることを分かってないから、こどもは。
だけど、塾とかも多いし、気が休まるところがなくて。
こども同士でも、気をつかって人間関係を築いてるから、すごい疲れてて。
ちょっと足をもんであげるだけでも、すぐコテっと寝ちゃうんだけど。

 

__

こどもの社会も大変なのね。

 

佐々木

大変そう。

 

__

何かを、我慢してるんだ。

 

佐々木

我慢してるけど、それがわからなかったりとか。

 

__

無自覚で。

 

佐々木

我慢してるのが、当たり前だと思っちゃうの。
それで、そのまま大人になっちゃったら、
我慢しかしない人生になっちゃうから。
自分のやりたいことを我慢して、
他のひとに合わせすぎちゃったりとか。
あと、お母さんが言うから、この会社は間違いないなとか、
お金もらってるんだから、
これくらいのしんどいことは当たり前なのかな、とか。

 

__

我慢が当たり前の人生。
そしてそれに無自覚って、怖いね。
自分で判断が出来なくなるとか、
そういうことにも繋がっていくんだ。
身体を整えることとか、マッサージやヨガって、
すごく暮らしに密着してて、とっても大事なのね。

 

佐々木

うん。
すごく、必要だなと思ってる。

 

 

__

岡山カルチャーゾーンの中でも、
地域ごとにそれぞれ特徴やカラーが違うと思うんだけど、出石はどう?

 

佐々木

丸の内に住んでた時も、隣町だけど、全然違う。
出石は、まだ古い建物とかも残っていて、
昔から住んでる方とかもいっぱいいるので、
できたら、すごく変わりすぎないで欲しいというのは思うんだけど、
空き家とかも結構あったりするから、
そういう場所をうまく使って、
盛り上げてもらえたりしたら、面白いかなとは思う。

 

__

1階でお商売して、2階が住居で、
みたいな街の特徴やスタンスを共有できるような人が入って、
同じような空気感で一緒にいられるような。

 

佐々木 

そういう空気感で。
やっぱり、このまったり感は大事にしたい。
いきなりスピード感のあるものが入ってきたら、
ちょっと怖いな、っていうのはある。

 

__

びっくりしちゃうよね。

 

佐々木

おばあちゃんとかがね(笑)。

 

__

腰抜かしちゃうかもしれないもんね(笑)。

 

佐々木

出石は今でも、お綱祭りとか、
水の神様を鎮めるお祭りの水神さん(水神まつり)とか、
昔からのお祭りとかもきちんとあって。
お綱祭りは、太い綱を三つ編みにして、龍を作って、
それを岡山神社まで引っ張って行って、納めるの。
すっごい重いし、力がいる仕事だから、
めちゃくちゃ男手が必要なんだけど、若い人が少ないから大変で。
あと、うちのお父さんも、
出石町の獅子舞(岡山市指定重要無形民俗文化財 備前太鼓歌)とかやってるけど、
そういうのもね、みんなだいぶご高齢になってきてるし、男手がいるから(笑)。
そういうのを無くさず、続けていけたらなと思っていて。

 

__

大事な伝統文化だもんね。
担い手不足は、深刻な問題かもしれないね。
獅子舞も以前参加してもらったけど
石山公園で一緒にやってた
「後楽の森と川パークマーケット」への思いってある?

 

佐々木

あれは、ほんとに最初からみんなの反応が良かったし、
出てくれた出店者の方もすごい良かったし、
お客さんからも、「次、いつやるの」とか、
生の声がすごいリアルに聞こえたイベントだったから、
すごい良かったなぁ、と思う。

 

__

うん。
今少し、見直しの時期ということで休憩にしてるけど、
また少し時間を置いてね。

 

佐々木

仕切り直してね、またやれたらいいな。
みんな期待してるから。

 

__

最近も、聞かれたりする?

 

佐々木

うん。聞かれたりします。
「パークマーケット、次はいつですか?」って。
友達もたくさん出店してくれてたから、期待してたりして。
ああいうイベントだったら、
出石町のおじいちゃんやおばあちゃんとかも行きやすいから、
みんな来てくれてたし。
みんな楽しめるというか、こどももすごく多かったし。

 

__

うん。
パークマーケットは、
地域の中にある公園が、性別も職業も年代も問わず楽しめる、
ゆるやかなコミュニティの場所になれば、という感じのコンセプトで、
出店していただくブースのセレクト感とか、
多少狙ったところもあるけど、
狙い以上にゆるやかで、おおらかで、いいイベントに成長したよね。

 

佐々木

うん。
ちょうどいい感じだった。
空気感、すごく良かった。

 

__

ね。絶妙な加減。
なんだろうね。
やっぱり、場所が持つ力もあるのかもしれないけどね。
あの、解放感とか、規模感とかね。

 

佐々木

あの場所を、
「あ、こういうふうにも使えるんだ」っていう
モデルのケースにもなったと思うし。

 

__

そうだよね。

 

佐々木

それまでって、公園として、あんまり機能してなかったというか。
うちは近所だから、友達とか家族で、
おにぎり握って、ピクニック気分で出かけて行って、お外で食べたりするんだけど、
わたしたち以外って、外国人しかくつろいでないというか。
日本人は、写真を撮ったりはするけれど、
芝生でくつろいだりとか、ベンチでのんびりしたりとか、本を読んだりとかっていうのは、
あんまりやらないみたいだから、もったいないなと思って。
だから、ああいうイベントが定期的にあったら、もっと使い方に幅が広がるというか。

 

__

場所の魅力や使い方を知ってもらって、日常の行動につなげてもらえるもんね。

 

佐々木

うん。
もっと、ごろごろしたらいいのに、と思って。
だから私は、ヨガマット持って行ってヨガをやったりとかもするし、
夜のお散歩とか、のんびりしに行ったりするんだけど。

 

__

公園って、本来そういう自由な場所だもんね。

 

佐々木

だけど、なんかみんなかしこまってて、ダラッとはしてないから。
せっかく芝生もあるし。
もうちょっと、なんかね。

 

__

そうね。
公共のオープンスペースでのくつろぎ方が上手じゃないのかな?
去年、利用者へのニーズ調査をした時に、
ただの通り道になってる、っていうことがよく分かって。

 

佐々木

そうそう。
そういう感じがある。

 

__

だから、のんちゃんみたいに使い方が上手な人は、
公園での楽しみを自分で発見できるけど、
そうじゃない人はみんな、あそこに、目的を持って行ってないというか。
目的は、石山公園の、その先にだけあって。

 

佐々木

そのついで、みたいな。
それもったいないな。

 

__

もったいないよね。
あそこに、リニューアルしたら常設のカフェが出来る予定なんだけど、
それが公園に行くきっかけのひとつになるといいんだけどね。

 

佐々木

こどもの頃、
ステージの周りには、1日中、すごくきれいな水がたっぷり流れてて、
いつも水の中で遊んでたの。
ステージの裏にも流れていて、すごく涼しかったし。

 

__

それが、公園の目玉になってたんだ。

 

佐々木

小学生のころは、入っちゃダメとかなかったから、
近所の子とか、いっぱい入ってた。
夏は、夕方になったら、涼みにくる人とかもいて。
水が止まって、もう随分経つけど。

 

__

せっかく、そういう、公園に行くきっかけになるものがあったのに、
上手く使えていなくて残念だし、もったいないね。

 

佐々木

うん。もったいないと思う。
こどもが遊んだら危ないから、とか、そういうのもあったりして、
こどもだけで行かせないようにとか。
まちなかは、今すごくこどもが増えてて、
中央小学校とかも、マンモス校になってるんだけど、
今、こどもたちには遊び場がない。

 

__

小学生とか、今、
学校が終わったあとに、自由に校庭で遊んだりできないらしいね。
だから、こどもたちが遊びやすい場所になってもいいかもしれんね。

 

佐々木

そう。安全でね。

 

__

うん。
お母さんたちは、こどもと一緒に公園行ったついでに、
カフェでコーヒー飲んでのんびりするとかね。

 

佐々木

うん。
目の届く範囲で、こどもたちが遊べて。

 

__

こどもも遊べて、
お母さんたちも、息抜きやリラックスができる場所って、
いいかもしれんね。

 

佐々木

なにか、ひとつでもいいから、
こどもが「これがあるから遊べる」っていうものがあるといいな。
オブジェ兼遊具、みたいなもの。
こどもランドみたいにする必要はないけど、
大人が見ても面白いカタチで。

 

__

こどもに優しい公園、っていうのも、

視点として、ひとつあってもいいよね。

 

佐々木

緑は、そのままで。
手を入れすぎず。

 

__

そうだね。
景観を生かすために整える必要はあると思うけど、
まちなかに、こんなに緑豊かな場所があるというのは、
とっても貴重な気がするよね。
あとは、イベントをやるときに必要な最低限の機能とか、
歩きやすさや、安全面への配慮とかね。
ロケーションの良さや、今の公園の良さを残しながら、絶妙なバランスでね。
それで、目的を持っていけるきっかけになるようなものがあって、
みんながくつろげる場所になるといいね。

 

佐々木

うん。
こどもも楽しめる場所。

 

__

うん。そうだね。
この声が届くといいね。

 

 

 

 

佐々木 彩乃(ささき あやの)

 

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